2011年5月1日日曜日

積読 生産 1 新IE入門シリーズ「多工程持ちと少人化」平野裕之

セル生産方式へ転換する工場の様子をTVで見たことはある。しかし、生産の現場で実際に働いたことが無いのでリアリティがない。
少しでもこの世界を近づいて見てみたい。


IEの歴史は古い。ストップウオッチで作業時間を計測し、それを分析し、改善を行う。
これは、1910年代からのフォード生産システムで行ってきた作業改善である。

一人の作業者で製品をつくりだすことは、コスト的に高くなり、効率的でないとされてきた。
したがって、製品を作り出す過程を、3S(単純化、専門化、標準化)によって作業を分けて多数の人に分担させた。一方で、この単一工程作業は、もの造りの持つ楽しさや達成感を味わう機会が少ないしくみともいえる。

この方法に限界がでてきた。つまり、在庫や運搬などのムダをそのままにして効率化を行っても、ムダの効率になってしまうのである。動作分析や作業改善だけでは根本的な改革は望めない。

そこで、生産性を抜本的に高めるために、「単一工程持ち→多工程持ち→多品種持ち」を目指すことになる。これは現在の生産における重要課題である。

また、多工程持ちは、作業に関わる人のモチベーションを高めるなど、人間性を高める方法としても価値がある。

各工程の比較は以下の通り。
(略)

コスト削減の定式は、投入(人)を減らすか、同じ投入で生産を高めるかである。
しかしこれは、工場の中の生産者だけの視点では限界がある。顧客の要求にどれだけ効率的に合わせられるかにある。

ここで少人化は、2つある。顧客の要求量の変動に合わせて最も少ない人数で行えるようにする狭義の少人化と、顧客の要求量の変動に関係なく何しろ人を省く、省人化がある。後者は機械化なども含まれる。

また、従来の定員制による単一工程持ちと、少人化された多工程持ちでは次の様な違いがある。
(略)

また、単一工程の多台持ちと多工程持ちの違いは以下の通り。
(略)

さらに、多工程持ちを実現するためには、①歩行削減、②作業制向上、③自動化が欠かせない。加工ライン、組み立てラインはその性質が異なるが、大体次のようなポイントで改善を行っていく。
(略)

※ ワーカー人件費が高騰してきた。日系企業も「日本では機械にやらせていることを中国では人間にやらせている」と以前は良く聞いていたが、最近は大型の自動化への投資を行い、人間にやらせない方法で進める企業も出てきてた。

ワーカー人件費の高騰や採用難で、この方向性は間違いがない。
しかし、投資の金額は巨額である。人海戦術から自動化へは一足飛びにはいかないだろう。
まずは、多工程持ちへ、そして多品種持ちへの転換を進めていくだろう。

しかし、これは誰が進められるのか?

日本の自動化された工場出身の若手日本人技術者がはたして中国人を指導できるだろうか。また、ここでは「単能工→多能工→技能者へ転換を加速させる」ためのしくみ(評価、報酬)と意識付けと実務教育がポイントになってくるだろう。

日本人の省人化が現地化であると多くの経営者は間違えている。

中国人がこのような自律的改善ができる能力開発や、実際の成功体験が共有され定着すること無しに、一番コストの高い日本人が先に省人化されてしまうことの無いように願いたい。

わかりやすくて実務的な本。写真はかなり古いが、事例は具体的に面白い。


平野裕之 新IE入門シリーズ「多工程持ちと少人化」 
日刊工業新聞2001

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