2011年5月28日土曜日

積読中国1-3「岐路に立つ中国―超大国を待つ7つの壁」津上俊哉

都市と農村「二元社会」を解消できるか 【第二の壁】

農民=二等公民の扱いはどの程度改善されているのか?

・2006年から農業税を廃止、租庸調以来の農民課税の歴史に終止符がうたれた。
建国直後の数年間の中国は、税収の4割を農民と農村にたよっていた。
・強制的な農産物の買い上げ制度で不当に低い価格で買い上げ、工業製品に比べて不当に低い価格で農産物を売り渡させることで生まれる差益を経済開発のために用いる(「プライシス・シザース」体制)
つまり、農民は都市における重工業建設や都市開発のために収奪されていた。
一方で、都市住民とは2等公民として差別されていた。

身分制による二元国家である。
都市に定住しながらも、正規の住民として認められず、社会保障などの面で大きな格差が存在している。出稼ぎ農民は(80年代の「盲流」→2000年代の「農民工」)
財源と都市住民の感情的な差別観から、完全に都市の社会保障体制に組み込むことは難しい。

農村は都市化するか。
中国の土地制度は、「国有制で社会主義公有制に由来する」のではなく、もともと香港をモデルに作成された「土地は国王のもの」の発想からスタートしている。国有は都市の土地であり、都市はその土地の利用権を売り、住宅や工場などをつくることができる、
農地は人民公社生産小隊に由来する「集体」(今の村)の所有と言う建前でありこの所有権は売却賃貸は禁止である。処分権の無い所有権である。

農村の都市化は、集体所有の農地を、国が収用して国有の都市用地に編入し、土地利用権を入札で払い下げる。。農地の収用価格は農業収入ベースで換算し、払い下げ価格は都市の土地利用の価値と言う別の市場原理もとに決定される。つまり、この地目変更で莫大な差益が生まれる
これは地方政府の財政収入になる。いわゆる「開発区」である。
しかし、中央政府はブレーキをかけた。農民の保護、農地の確保(かつての飢饉がトラウマとなっている農地18億畝の保全)、経済のマクロコントロール景気調整手段が目的である。一方、旧工場の廃止による住宅確保など、都市部の土地活用の効率化なども行っているが、土地供給の不足は住宅価格の過熱を生んでいる。

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